精油・エッセンシャルオイル60種類データベース




精油の成分類について

精油は、様々な植物の部位から抽出される揮発性の化合物の混合物であり、これらは成分の化学的構造によって分類されます。成分類は、精油が持つ特性や効果を理解するために重要です。各成分類には、特定の官能基と炭素数が特徴的であり、それぞれが異なる作用を持つ成分を含んでいます。これにより、精油がどのように働くかをより深く理解することができます。

1. モノテルペン類 (Monoterpenes)

モノテルペン類は、精油の中で最も一般的な成分類の一つであり、炭素数10個の構造を持つ化合物です。この成分類には、炭化水素類、アルコール類、アルデヒド類、エステル類、ケトン類、酸化物類が含まれ、それぞれが異なる特性と効果を持ちます。

• モノテルペン炭化水素類 (Monoterpene Hydrocarbons)

  • 炭素数: 10
  • 官能基: なし(炭化水素)
  • 主な作用: 抗炎症、抗菌、免疫刺激、リフレッシュ効果。気分を高め、ストレス軽減に役立ちます。
  • 代表的な成分:
    • リモネン (Limonene)
      • 作用: 抗酸化作用、抗炎症作用、免疫刺激作用、リフレッシュ効果。
      • 含まれる精油: オレンジ、レモン、グレープフルーツ、ベルガモット
    • ピネン (Pinene)
      • 作用: 抗菌作用、去痰作用、呼吸器系サポート、集中力向上。
      • 含まれる精油: ローズマリー、ユーカリ、ブラックスプルース
    • ミルセン (Myrcene)
      • 作用: 鎮痛作用、抗炎症作用、リラックス効果。
      • 含まれる精油: バジル、ローレル、タイム

• モノテルペンアルコール類 (Monoterpene Alcohols)

  • 炭素数: 10
  • 官能基: -OH(アルコール基)
  • 主な作用: 抗菌、抗ウイルス、リラックス作用を持つ。抗菌作用が強く、心地よい香りを持つ。
  • 代表的な成分:
    • リナロール (Linalool)
      • 作用: 鎮静作用、抗菌作用、抗ウイルス作用、リラックス効果。
      • 含まれる精油: ラベンダー、ローズウッド、コリアンダー、バジル
    • ゲラニオール (Geraniol)
      • 作用: 抗菌作用、抗ウイルス作用、虫除け効果、ホルモンバランス調整。
      • 含まれる精油: ゼラニウム、ローズ、パルマローザ、ユーカリレモン
    • α-テルピネオール (α-Terpineol)
      • 作用: 抗菌作用、抗ウイルス作用、鎮静作用、免疫強化。
      • 含まれる精油: ティーツリー、ユーカリ、ジャスミン、サイプレス

• モノテルペンアルデヒド類 (Monoterpene Aldehydes)

  • 炭素数: 10
  • 官能基: -CHO(アルデヒド基)
  • 主な作用: 抗菌、抗炎症、抗真菌、虫除け効果。強力な抗菌作用とフレッシュな香りが特徴。
  • 代表的な成分:
    • シトラール (Citral)
      • 作用: 抗菌作用、抗炎症作用、抗真菌作用。
      • 含まれる精油: レモングラス、メリッサ、レモンバーム
    • シトロネラール (Citronellal)
      • 作用: 抗菌作用、虫除け効果、抗炎症作用。
      • 含まれる精油: シトロネラ、ユーカリレモン

• エステル類 (Monoterpene Esters)

  • 炭素数: 10
  • 官能基: -COO-(エステル基)
  • 主な作用: 鎮静、抗痙攣、リラックス。フルーティーで心地よい香りを持ち、リラクゼーション効果が高い。
  • 代表的な成分:
    • 酢酸リナリル (Linalyl acetate)
      • 作用: 鎮静作用、リラックス効果、抗炎症作用。特に心身のリラックスを促進し、ストレス軽減に役立ちます。
      • 含まれる精油: ラベンダー、ベルガモット、クラリセージ、プチグレン
    • 酢酸ゲラニル (Geranyl acetate)
      • 作用: 抗菌作用、鎮静作用。心地よいフローラルな香りを持ちます。
      • 含まれる精油: ゼラニウム、パルマローザ、ローズ、レモングラス

• ケトン類 (Monoterpene Ketones)

  • 炭素数: 10
  • 官能基: =O(ケトン基)
  • 主な作用: 粘液溶解、組織再生、消化促進。強い作用を持つため、使用には注意が必要。
  • 代表的な成分:
    • メントン (Menthone)
      • 作用:
        • 消化促進作用: メントンは消化器系を刺激し、消化不良や胃の不快感を和らげる効果があります。
        • リフレッシュ効果: 爽やかな香りが精神をリフレッシュさせ、集中力を高める効果があります。
        • 鎮痛作用: メントンには、軽い鎮痛作用があり、筋肉や関節の痛みを和らげるのに役立ちます。
        • 抗菌作用: 菌に対して抗菌作用があり、清涼感をもたらしつつ感染予防に寄与します。
      • 含まれる精油: ペパーミント、スペアミント、ローズマリー、ユーカリ
    • カンファー (Camphor)
      • 作用:
        • 循環促進作用: カンファーは血液循環を促進し、筋肉や関節の痛みを和らげる効果があります。これにより、冷え性や疲労回復にも役立ちます。
        • 去痰作用: 気道の粘液を溶解し、痰の排出を助ける作用があります。呼吸器系の健康をサポートします。
        • 鎮痛・鎮痙作用: 軽い鎮痛作用と筋肉の緊張を和らげる鎮痙作用があり、筋肉痛や神経痛の緩和に使用されます。
        • 刺激作用: カンファーは刺激作用があり、精神を活性化させ、覚醒効果をもたらします。
      • 含まれる精油: ローズマリー(カンファー型)、ホーリーフ、ラベンダー・スピカ(スパイクラベンダー)

• オキシド類/酸化物類(Monoterpene Oxides)

  • 炭素数: 10
  • 官能基: -O-(酸化物基)
  • 主な作用: 抗菌、抗ウイルス、去痰、呼吸器系サポート。特に呼吸器系のサポートに効果的。
  • 代表的な成分:
    • 1,8-シネオール (1,8-Cineole)
      • 作用:
        • 去痰作用: 気道の粘液を溶かし、痰の排出を促進します。呼吸を楽にし、咳を和らげる効果があります。
        • 抗炎症作用: 炎症を抑え、呼吸器系の炎症を軽減する効果が期待されます。
        • 抗菌・抗ウイルス作用: 様々な細菌やウイルスに対して効果があり、感染症の予防や治療に役立ちます。
        • リフレッシュ効果: クリアでスッキリとした香りが、精神をリフレッシュさせ、集中力を高める効果があります。
      • 含まれる精油: ユーカリ、ローズマリー、ティーツリー

2. セスキテルペン類 (Sesquiterpenes)

セスキテルペン類は、炭素数15個の構造を持つ化合物で、一般的にモノテルペン類よりも重く、香りも深いものが多いです。抗炎症作用や鎮静作用、抗菌作用などの効果があり、肌の健康をサポートする成分も含まれています。

• セスキテルペン炭化水素類 (Sesquiterpene Hydrocarbons)

  • 炭素数: 15
  • 官能基: なし(炭化水素)
  • 主な作用: 抗炎症、鎮痛、抗アレルギー。炎症やアレルギー反応を和らげる効果があります。
  • 代表的な成分:
    • カリオフィレン (Caryophyllene)
      • 作用: 抗炎症作用、鎮痛作用、抗アレルギー作用。
      • 含まれる精油: クローブ、オレガノ、ヘリクリサム

• セスキテルペンアルコール類 (Sesquiterpene Alcohols)

  • 炭素数: 15
  • 官能基: -OH(アルコール基)
  • 主な作用: 抗炎症、鎮静、肌の健康維持。炎症や肌の健康維持に役立ちます。
  • 代表的な成分:
    • ビサボロール (Bisabolol)
      • 作用: 抗炎症作用、鎮静作用、肌を落ち着かせる効果。
      • 含まれる精油: カモミール、ジャスミン、ローズ、ネロリ
    • ファルネソール (Farnesol)
      • 作用: 抗菌作用、抗真菌作用、香りの持続効果。
      • 含まれる精油: ジャスミン、ローズ、ネロリ
    • ネロリドール (Nerolidol)
      • 作用: 鎮静作用、抗菌作用、抗真菌作用。
      • 含まれる精油: ジャスミン、ティーツリー、ジンジャー
    • スクラレオール (Sclareol)
      • 作用:
        • ホルモンバランス調整: スクラレオールはエストロゲン様作用を持ち、ホルモンバランスを整えるのに役立ちます。特に女性の更年期症状や月経不順のサポートに使用されます。
        • 抗菌作用: 抗菌作用があり、感染症の予防や肌の清潔を保つのに役立ちます。
        • リラクゼーション効果: スクラレオールはリラックス効果があり、ストレス軽減やリラクゼーションに貢献します。
      • 含まれる精油: クラリセージ (Clary Sage)

3. ジテルペン類 (Diterpenes)

ジテルペン類は、炭素数20個の構造を持つ化合物で、より重く複雑な構造を持ちます。抗菌作用や抗炎症作用、免疫調整作用があり、体内のバランスを保つサポートをします。

• ジテルペンアルコール類 (Diterpene Alcohols)

  • 炭素数: 20
  • 官能基: -OH(アルコール基)
  • 主な作用: 抗菌、抗炎症、免疫調整。炎症を抑え、免疫系の調整に役立ちます。

4. フェノール類 (Phenols)

フェノール類は、非常に強力な抗菌作用や抗ウイルス作用を持つ成分で、特に感染症の予防や治療に効果的です。これらの成分は非常に刺激が強いため、使用には注意が必要です。

• フェノール類 (Phenolic Compounds)

  • 炭素数: 多様(フェノール環を持つ)
  • 官能基: -OH(フェノール基)
  • 主な作用: 強力な抗菌、抗ウイルス、免疫刺激。強力な抗菌作用を持ち、感染症の予防に効果的。
  • 代表的な成分:
    • チモール (Thymol)
      • 作用: 強力な抗菌作用、抗ウイルス作用、免疫刺激作用。
      • 含まれる精油: タイム、オレガノ、バジル
    • カルバクロール (Carvacrol)
      • 作用: 抗ウイルス作用、抗菌作用、消毒効果。
      • 含まれる精油: オレガノ、タイム
    • ユーゲノール (Eugenol)
      • 作用: 鎮痛作用、抗酸化作用、抗菌作用。
      • 含まれる精油: クローブ、バジル、ローレル

• フェノールエーテル類 (Phenolic Ethers)

  • 炭素数: 多様(フェノール環を持つ)
  • 官能基: -O-(エーテル基)
  • 主な作用: 抗菌、消化促進、鎮痛作用。消化を助け、抗菌作用が強い。
  • 代表的な成分:
    • アネトール (Anethole)
      • 作用:
        • 消化促進作用: 消化器系を刺激し、胃腸の働きを助けます。消化不良や胃の不快感を和らげるのに役立ちます。
        • 鎮痛作用: 軽い鎮痛効果があり、特に消化器系の痛みを和らげるのに効果的です。
        • 抗菌・抗炎症作用: 抗菌作用があり、感染症の予防や治療に役立ちます。また、炎症を抑える効果も期待されます。
        • ホルモン調整作用: エストロゲン様作用があり、ホルモンバランスの調整に寄与する可能性があります。
      • 含まれる精油: フェンネル、アニス、スターアニス
    • エストラゴール (Estragole)
      • 作用:
        • 消化促進作用: 消化器系をサポートし、消化不良や胃腸の不快感を軽減します。
        • 鎮痛作用: 消化器系の痛みを和らげる効果があります。
        • 抗菌・抗真菌作用: 抗菌および抗真菌作用があり、感染症の予防に役立ちます。
        • 中枢神経系刺激作用: 軽い中枢神経刺激作用があり、精神を活性化させます。
      • 含まれる精油: タラゴン、バジル、アニス

5. 芳香族アルデヒド類 (Aromatic Aldehydes)

芳香族アルデヒド類は、芳香環とアルデヒド基を持つ成分で、非常に強力な抗菌作用や抗炎症作用を持ちます。また、独特の香りが特徴で、血行促進効果も期待できます。

• 芳香族アルデヒド類 (Aromatic Aldehydes)

  • 炭素数: 多様(芳香環を持つ)
  • 官能基: -CHO(アルデヒド基)
  • 主な作用: 抗菌、抗炎症、血行促進。強力な抗菌作用と抗炎症作用を持つ。
  • 代表的な成分:
    • シナミックアルデヒド (Cinnamic Aldehyde)
      • 作用: 強力な抗菌作用、抗炎症作用、血行促進効果。
      • 含まれる精油: シナモン(樹皮)、カッシア、ラブダナム

6. クマリン類 (Coumarins)

• クマリン類 (Coumarins)

  • 炭素数: 多様(クマリン骨格)
  • 官能基: 多様(ラクトン環など)
  • 主な作用: 抗凝血、鎮静、リラックス効果。血液の循環をサポートし、リラックス効果がある。

7. ラクトン類 (Lactones)

• ラクトン類 (Lactones)

  • 炭素数: 多様(ラクトン環)
  • 官能基: =O(ラクトン環の一部)
  • 主な作用: 消化促進、抗炎症、抗アレルギー。消化を助け、炎症を抑える効果がある。

まとめ

精油の成分類は、それぞれの化学的構造によって異なる特性と効果を持ちます。モノテルペン類、セスキテルペン類、ジテルペン類、フェノール類、芳香族アルデヒド類など、各成分類には特定の官能基と炭素数が特徴的です。

モノテルペン類は、軽い香りと多様な作用を持つ成分が多く、抗菌、抗炎症、リフレッシュ効果が期待されます。セスキテルペン類はより重く深い香りを持ち、抗炎症や鎮静効果に優れています。ジテルペン類は抗菌や免疫調整作用を持ち、体内バランスをサポートします。

フェノール類と芳香族アルデヒド類は、非常に強力な抗菌・抗ウイルス作用を持ち、特に感染症の予防や治療に効果的です。ただし、使用には注意が必要です。これらの成分類を理解することで、精油の選び方や使用方法をより効果的に行うことができるでしょう。

精油の効果を最大限に引き出すためには、成分類に基づいた適切な選択と使用が重要です。日常生活の中で、それぞれの精油の特性を活かして、心身の健康をサポートしていきましょう。