ラベンダーは、古くから愛されてきたハーブの一つで、さまざまな種類があります。それぞれのラベンダーには特有の香りや効能があり、用途や栽培に適した環境も異なります。今回は、代表的な4つのラベンダーの種類とその特徴について詳しく紹介します。

目次

1. ラベンダー・アングスティフォリア (Lavandula angustifolia)

概要:
ラベンダー・アングスティフォリアは、最も広く知られたラベンダーの一つです。「イングリッシュラベンダー」「トゥルーラベンダー」「真正ラベンダー」とも呼ばれ、寒冷地でよく育ちます。甘く柔らかなフローラルな香りが特徴で、アロマテラピーで最も一般的に使用されています。

特性と用途:

  • 香り: 甘くて柔らかなフローラルな香りで、リラックス効果が非常に高いです。香り成分にはリナロールや酢酸リナリルが多く含まれています。
  • 耐寒性: 冷涼な気候に強く、イギリスやフランスのプロヴァンス地方などで多く栽培されています。
  • 用途: アロマテラピーでストレス緩和、不眠改善、鎮静効果を期待できます。また、肌に優しく、火傷や虫刺されのケアにも使用されます。

2. スパイクラベンダー(Lavandula latifolia) /ラベンダースピカ

概要:
スパイクラベンダーは、シャープでカンファー(樟脳)のような香りが特徴のラベンダーです。温暖な地域に適しており、抗菌・抗ウイルス効果が高く、呼吸器系のケアに使用されることが多いです。

特性と用途:

  • 香り: カンファーのようなシャープで力強い香りで、抗菌・抗ウイルス効果があります。
  • 温暖性: 温暖な地域、特に地中海沿岸や南ヨーロッパでよく栽培されています。
  • 用途: 風邪やインフルエンザの症状緩和、呼吸器系のケア、筋肉痛の緩和に有効です。また、香りの強さから集中力を高める目的でも使用されます。

3. ラヴァンディン (Lavandula x intermedia)

概要:
ラヴァンディンは、トゥルーラベンダーとスパイクラベンダーの交配種で、耐寒性が高く、香りが強いのが特徴です。商業的に広く栽培され、精油の生産量が多いです。精油もアングスティフォリアに比べお手頃な価格で購入が可能で、「ラベンダーグロッソ」や「ラベンダースーパー」として販売されています。

特性と用途:

  • 香り:ラベンダー・アングスティフォリアとスパイクラベンダーの中間的な香りを持ち、リナロール、酢酸リナリル、カンファーが含まれています。香りは強く、少しシャープさも感じられます。
  • 交配種: ラベンダー・アングスティフォリアとスパイクラベンダーの特性を受け継ぎ、耐寒性と耐熱性の両方を兼ね備えています。
  • 用途: 商業的に大量生産され、香水や石鹸などの香料として広く利用されています。また、精油はリラックス効果があり、抗菌作用も持っています。

4. ストエカスラベンダー (Lavandula stoechas)

概要:
ストエカスラベンダーは、地中海地域原産のラベンダーで、独特の花の形状が特徴です。香りは他のラベンダーよりも強く、ややスパイシーで、観賞用として人気があります。

特性と用途:

  • 香り: スパイシーで樹脂のような香りが特徴で、他のラベンダーとは異なる独特の香りを楽しめます。
  • 観賞価値: うさぎの耳のような形をした花が観賞用として人気で、庭園や装飾品として利用されます。
  • 用途: 精油としての利用は少ないですが、観賞用やポプリとして使われることが多いです。また、伝統的な薬用としても利用されることがあります。

スパイクラベンダーとラベンダースピカは同じラベンダー?

「Lavandula latifolia」と「Lavandula spica」は、どちらもスパイクラベンダーを指す学名です。これらは同じ植物を指しており、特にカンファーのようなシャープな香りが特徴です。正式な学名は「Lavandula latifolia」ですが、「Lavandula spica」という名前も一部で使われています。

学名の背景と整理

植物学の歴史において、同じ植物に異なる学者が異なる名前を付けることがありました。その結果、1つの植物に複数の学名が存在することもありました。しかし、国際植物命名規約(ICN)に基づき、正式な学名が決定されると、それが標準として使用されるようになります。

  • スパイクラベンダー: これは一般的に使用される名前で、特にアロマテラピーやハーブの分野で広く知られています。カンファーのようなシャープで力強い香りが特徴で、抗菌・抗ウイルス効果が高い精油が得られます。
  • ラベンダースピカ: こちらはスパイクラベンダーを指すもう一つの学名です。商業的や地域的な文脈では「Lavandula spica」の名前が使われることがありますが、現代の植物学では「Lavandula latifolia」が正式な学名とされています。

日本で有名なラベンダーの名所

  1. 富良野ラベンダー(北海道)
  • 特徴: 富良野は日本国内で最も有名なラベンダーの産地です。美瑛や中富良野など、広大なラベンダー畑が広がり、観光客が多く訪れます。特に「ファーム富田」が有名で、「おかむらさき」や「濃紫早咲」などの品種が栽培されています。
  1. 美瑛ラベンダー(北海道)
  • 特徴: 富良野と並んで美瑛もラベンダーの名所として知られています。美しい丘陵地帯にラベンダー畑が点在しており、観光地としても人気があります。ここでも主に「おかむらさき」や「濃紫早咲」が栽培されています。
  1. たんばらラベンダーパーク(群馬県)
  • 特徴: 群馬県のたんばら高原にあるラベンダーパークは、首都圏からのアクセスも良く、夏には多くの観光客が訪れます。約5万株のラベンダーが植えられています。

富良野のラベンダー (Lavandula angustifolia)

  • 「おかむらさき」: 富良野で代表的な品種。香りが豊かで、精油の品質が高いことで知られています。
  • 「濃紫早咲(のうしはやざき)」: 早咲きで濃い紫色の花を咲かせるため、観賞用として人気があります。
  • 「はなもいわ」: 冷涼な気候に強く、北海道以外でも栽培が可能。香りがやさしく、お茶やポプリにも利用されています。

お茶として利用されるラベンダー

お茶として利用されるラベンダーは、主にラベンダー・アングスティフォリア(Lavandula angustifolia) です。このラベンダーは香りが柔らかく、甘いフローラルな風味を持っており、飲用に適しています。

  • 安全性: ラベンダー・アングスティフォリアはカンファーやシネオールの含有量が低いため、飲用する際に安全性が高いです。
  • 味と香り: 優しい香りと味わいがあり、リラックス効果が高いため、ストレス緩和や睡眠改善に役立ちます。

注意: スパイクラベンダーやラヴァンディンは香りが強すぎたり、カンファー含有量が高いため、飲用には向いていません。

まとめ

ラベンダーは、種類によって異なる香りや効果があり、用途もさまざまです。ラベンダー・アングスティフォリアはリラックス効果が高く、スパイクラベンダーは抗菌・抗ウイルス効果に優れています。ラヴァンディンは商業的に広く利用され、ストエカスラベンダーは観賞用として人気があります。

日本では、特に富良野ラベンダーが有名で、お茶としても利用されるラベンダー・アングスティフォリアは、柔らかな香りとリラックス効果で日常に取り入れやすいハーブです。きっと心地よい時間をもたらしてくれるでしょう。